マフィアとの対決
　職業倫理の高揚を全面に押し立てて，社会改良運動に取り組んだロータリーと時を同じくして，同じシカゴで台頭したマフィアは無関係でいられるはずはありませんでした。社会に有用な職業を前提とするロータリーと社会に害をなす職業を前提とするマフィアが真正面から衝突することは必然的なこととも言えるものです。
　ロータリーの職業奉仕理念が完成し，その理念をロータリアンが経営する企業において実践し，業界全体の職業倫理基準を高めようとしていた時期とマフィアが１９２０年に施行された禁酒法を背景に勢力を拡大していった時期が一致していたことは皮肉なことでした。
　シカゴ・クラブは，マフィアに牛耳られていた映画産業を粛清し，公開前にその内容を検討するために広報委員会を作って，映画の倫理規制を実施しました。また，禁酒法の影響を受けてマフィアの勢力下にあったレストラン業界を「レストラン協会の道徳律」により改革しました。さらには，シカゴ市防犯委員長に任命されたシカゴクラブの元会長のヘンリー・チャンバリン大佐は，マフィアの粛清に乗り出し，１９２０年にはマフィアの息がかかった保釈保証人を告発したりしました。１９２４年には，ロータリアンの眼鏡商を証人として出廷させて遺留品の眼鏡からマフィアの大物を逮捕し，殺人事件を解決したことも有名なことです。
　連邦警察もエリオット・ネスを隊長とする特殊部隊を投入して，１９３１年に所得税法違反の容疑でアル・カポネを逮捕して，１１年の実刑判決を受けさせたことは有名な話しです。
　利益を周囲の人々と共有することで，自らの体質を改善して，大恐慌にも耐えることできることを実証し，社会に有用な職業を尊重し，自らの職業を通じて社会に貢献し，業界の職業倫理の高揚を求めてマフィアと対決して，みごとに勝利を勝ち取ったロータリーに対し，ロータリアンだけではなく，一般社会の人々も大きな尊敬と賞賛を与えたことは確かなことです。
　脱税，贈収賄，不公正取引，市場買い占め，おとり商法，他国の法律無視，契約不履行，商標侵害などの行為は，現在では，殆どが法律により規制されていますが，ロータリーの創設期から２０数年間のこれらの不公正な取引がまかり通っていた時代に，これに敢然と立ち向かって，法律により規制までこぎ着けたのは，ロータリーの功績なのです。