本日は,日本相撲協会の理事候補選挙があることは,広く,新聞・テレビで報道されているところです。会長の時間に,「信託と財団」のお話をしようと思ったのは,テレビ報道がきっかけです。
個人や法人の資金を公益活動に活用する制度としては,公益信託と公益財団法人の二つの制度があります。信託制度は中世からイギリスにおいて発展し,公益信託は,独自の社会的機能を果たしております。一方,財団制度は,アメリカにおいて発展し,企業が社会的責任を果たすための主体となることが多いとされております。信託も財団も公益目的ではない私益目的のものもあります。
日本相撲協会は,公益財団法人です。十数年前に公益法人制度が大改革されて,公益性を公的機関が認定することになりました。公益性を認定されないと一般社団法人か一般財団法人か登記しない任意団体になります。公益財団法人である日本相撲協会は,一財団法人と比較して,様々な規制を受けております。傷害事件が大きく報道されるのも,この公益性が理由となっております。
ドイツ民法では,財団法人・社団法人ともに法人格付与の要件として。「公益性」は要求されていません。これは,過去に全体主義が政治の主流となった歴史を踏まえて,「公益性」の判断は社会の変化によって影響を受けることから,一旦付与された法人格を否定されことになると法的安定性を害することになることを排除するものとされています。
ロータリークラブの関連団体であるロータリー日本財団やロータリー米山記念奨学会は公益財団法人となっておりますが,これらの中心に位置するロータリークラブの日本の法人制度での位置づけはどのようなものでしょうか。
国際ロータリーは,アメリカが発祥の地ですから,ドイツの伝統的な法人概念には当てはまらず,非政府組織(NPO)として位置づけられていますが,日本でも同様です。NPOは,可能なかぎり,他の権利能力がある法人と同等に取り扱われます。
公益目的の財団,信託などによる文化活動への補助事業や弱者救済事業は,制度の違いはあれ,先進国に共通しています。これは,資本主義社会の歪みを矯正する社会政策的な発想に基づいているものすが,その制度がどのように発達したかはその国の文化・風土により様々です。全世界的なNPOの一つとして,今一度,国際ロータリーの一つの柱の理念である職業奉仕を考えてみてはどうでしょうか。