決議23・34
ロータリー運動を一般奉仕概念を探求する精神的な場としてではなく,実践的な社会奉仕活動を実践する場として捉える傾向は,地方の小さなクラブに多く見られました。
社会奉仕が,ロータリー運動の中で市民権を獲得するようになった一方で,その「奉仕」のあり方を巡る論争が起きたのです。
ロータリー運動を「奉仕の心の形成」と捉えた理論派は,ロータリークラブの使命は,ロータリアンに「奉仕の心」を形成させることであり,ロータリアン個人個人が奉仕の心を持って,自分の職場や地域社会の人々の幸福を考えながら,職業人としての生活を歩むことであると考えたのです。もし,職業奉仕以外の分野で,奉仕に関する社会的ニーズがあれば,それぞれの会員が個人の奉仕活動として実施するか,自分が属している職域や地域社会の団体活動として実施すればいいのであって,クラブはあくまでもどのような社会的ニーズがあるかをアナウンスすることに止まるべきであるという考え方です。
これに対して,「奉仕活動の実践」に重点を置く実践派は,現実に身体障害者や貧困などの深刻な社会問題が山積し,これまでにロータリークラブが実施した社会奉仕活動が効果を挙げていることを根拠に,理論派とことごとく対立したのです。実践派から見れば,奉仕の機会を見出して,それを実践することこそロータリー運動の神髄であり,単に奉仕の心を説き奉仕の提唱に止まる理論派の態度は,責任回避としか思われなかったのです。
「奉仕の心の形成」と「奉仕の実践」の論争は,個人奉仕と団体奉仕,さらには金銭的奉仕の是非にまで発展し,綱領から社会奉仕の項目を外せという極論まで出るほどの激しい対立が続いたのです。
この対立を解消するために,国際ロータリーの理事会は,1923年セントルイス大会においてロータリー活動全般に関する決議23・34を決議しました。その後,決議23・34は数回の改正を経て,現在の「社会奉仕に関するロータリーの方針」として制定されております。
その要旨は,次のとおりです。
1 ロータリーは,基本的には一つの人生哲学であり,その哲学は奉仕の哲学である。
2 ロータリークラブは,事業および専門職種に携わる人の代表として,ロータリーの哲学を
受入れ,次のことを実行することを目指している人々の集まりである。
⑴ 奉仕の理論
⑵ 実際例を団体で示すこと
⑶ 職業および日常生活での理論の実践
⑷ 実例により,ロータリアン以外の人々すべてが,理論と実践することを励ますこと
3 奉仕する者は行動しなければならない。ロータリーの哲学を客観的な行動に表さなければ
ならない。奉仕の理論を実践に移さなければならない。
4 各ロータリークラブはクラブとして関心があり,地域社会に適した社会奉仕活動を
自主的に選ぶ絶対的な権利を持っている。しかし,いかなるクラブもロータリーの綱領を
無視したり,ロータリークラブ結成の本来の目的を危うくするような社会奉仕活動を
行ってはならない。