12月になりました。速いですね日々の移り変わりはびっくりするほど速いです。
　今朝起きて外を見たら屋根の上が真っ白でした。この冬初めての積雪でしたが、いつもは暗い朝の部屋が、階下の屋根の雪からの照り返しでとても明るくて、滅入りがちな冬の朝に嬉しい日射しでした。これも季節が進んでいる確かな証拠。そう思うと冬になったことを嘆くのではなく、春を待つ前向きな気持ちが芽生えますね。
　今日は米山奨学生のチン・ティー・タンさんがお見えになっています。
　11月30日に東クラブさんが中心となって米山奨学生の皆さんとのボーリング大会が例会と一緒に行われました。30人ほどが参加され、賑々しくゲームは開始。昭和30年生まれの私や同年代の方たちは「第一次ボーリング世代」ですから、ゲームはお手のもの・・のはずでしたが、普段何もしていないのですからスコアは惨憺たるものでした。
　話は変わりますが、これまでの卓話で自分の職業のことを詳しくお話したことはありませんでしたが、今日は仕事でのエピソードをお話します。
　仕事は必ずしも開発などの発展的な場面だけではありません。人生に行き詰まってしまった人の家に伺うこともあります。もう10年以上前のこと。11月頃の寒い日の午後でした。
　町境の30戸有るか無いかの辺鄙な集落の一軒家の玄関は開いたまま。大きな声で挨拶しても誰も応えず、小屋にいる老犬がくぐもった声を出すだけ。私たちは部屋の中を見て図面を書かなければならなかったので上がり込み、2階に向かい子供部屋を見ました。そこには小学校高学年の女の子の写真が写真立てに入れられて飾られていました。「この家に住む子供に違いない」と思いつつ、しばらくしてから玄関からまっすぐにある居間にたどり着きました。そこには大きな仏壇がありました。その上にはいくつかの遺影が飾られていましたが、一番左には高校生らしい女の子の遺影があったのです。
　私は早世のうら若い高校生の死を思い、子供を持つ親としてとても困惑しました。同時にさっき階上で見た小学生とこの高校生は同一人物だと悟りました。とてもよく似ていたのです。胸にこみ上げるものがありました。この家の時間はこの女子高校生の死から冷たく止まったままのようでした。いつ、どんな理由で、どこで、この子は他界したのかと漠然と思い描きましたが、ただただ悲しみが込み上げてくるだけでした。なにがあったのか多分あの老犬は知っているのでしょう。またくぐもった声で吠え始めるのでした。
　家は雑然とした部屋ばかりでしたが子供部屋だけは比較的綺麗に整理されていました。この子に向けられた親の愛情を知ることができました。しかし、小学校から高校まで過ごしたであろうあの部屋はぬくもりもなく、すきま風が入り込んでいるだけでした。
　子に先立たれることほど辛いことはないと思います。しかし、世の中には病気や事故、事件によって若者の死は日常のように繰り返されています。
　どうか一人でも多くの若者が素晴らしい人生を送ることができますよう願って本日の卓話とします。