8月の会長の時間では,ロータリーに関するお話をしていませんでしたので,ロータリーが創設された当初のロータリーの目的についてお話しすることにいたします。
ロータリーの創設当初は,「奉仕」という概念は芽生えておらず,限定会員制度の社交クラブでしたから,その目的は会員相互の親睦を深めることでした。
殺伐としたシカゴの中で安らぎを求め友情を育むために「一人一業種」と「定例の会合」によって相互の親睦を深めていたクラブの中に,次第に会員の事業にお互いが利便を図り合う「相互扶助」の考え方が発生しました。
当時のシカゴロータリークラブの定款には,「親睦の充実」と「職業上の利益の向上」が規定されています。ロータリーはエゴイズムの中から出発したものと言えるのです。
会員の事業上の利益の向上を図るために,会員同士の相互扶助が活性化され,それは,積極的な「互恵取引」に発展します。所謂,持ちつ持たれつの世界です。印刷屋のラグレスは,保険を保険代理店のニュートンと契約し,ニュートンはラグレスから文房具や用紙類を買います。二人は,シールから石炭を買い,シールは自分の保険と印刷を二人に依頼します。ハリスは,当然の如く,みんなの法的問題を引受け,汚れたシャツはアーヴィンの洗濯屋に届け,洋服の注文はショーレーに頼みます。無限に関係が続く,自己中心的な相互扶助のグループが形成されたのです。
当時のシカゴ・クラブのパンフレットには,会員になることによって,事業上のメリットが得られ,会員が商品や原材料を購入するときは,会員相互の取引が義務であり,さらに原価で提供することが原則であることが明記されています。
会員相互で商品や原材料を原価で取引して,それを一般の人に売って大きな利潤を得るのですから,効率的です。この制度は会員の事業に大きな経済効果を生み出し,零細な企業主でもロータリークラブに入会すれば必ず事業は拡大し,大金持ちになれるとさえ言われていたのです。
ポール・ハリスは,会費が高いことに不平を洩らす会員に,原価取引で得られる利潤を考えれば決して高い会費とは言えないと諭しながらも,後日,「物質的互恵」制度への批判に対して,「初期のロータリーの目的は利己であったとしばしば言われるが,そのとおりであったかも知れない。会員が利己か利他かの判断は,何によって幸せを見つけ出すかによって決まる。もし,会員が自分の利益を図ることに幸せを見出していたとすれば,利己主義であり,反対に,友人を助けることだとすれば,それは利他である。シカゴ・クラブの初期の段階に,この両方の考え方があったとしても,それは,至極当然のことであろう。」と弁明しているのです。
ここで,賢明な会員の皆様は,初期のロータリークラブはマフィアに似てるのではないかという点に気が付かれたことと思いますが,この点は,現在調査中です。