国際奉仕の概念について
初期のロータリーにおいて,最初に国際奉仕に類する活動がなされたのは,第一次世界大戦中の1914年ころのことと言われています。アメリカからヨーロッパに出兵したロータリアンの子弟をイギリスのロータリアンの家庭で世話をしたり,アメリカ,イギリス,アイルランド,カナダのロータリークラブが,ヨーロッパ各地の難民への物資補給,傷病兵への慰問,復員軍人へのボランティア活動をしたのです。戦争を契機に奉仕活動が展開されたのは,国際赤十字と同じなのです。
初期のロータリー運動がまたたく間に全世界に広がった背景には,全ての会員を平等に扱い,会員に差別感を抱かせなかったことが大きな理由として指摘されています。宗教と政治に関する問題は,友情を損ねる虞があるから議論しないという伝統は,今日に至るまで引き継がれ,更には,宗教や政治以外の問題でも,事の白黒をつけるまで議論すること自体が親睦を阻害するという理由から,避けようとする考えが根強く残っています。
1922年に改正された国際ロータリーの綱領に国際奉仕の概念が加えられました。国際奉仕の項目は,現在までも変更削除されることなく存続しています。
ロータリーの国際奉仕の基幹となる思想は,国家,思想,宗教などの要素が複雑に絡み合って,現実には一つとは言えない世界をロータリアンのFellowshipに基づいた相互理解によって一つのものにして,恒久の世界平和を目指そうとするところにあります。
会員間の意見が分かれるような案件は,これを討論することは避けるというロータリーの原則もあり,国際的な紛争が発生した場合には,国際ロータリーは中立の立場を取らざる得ないし,当事国のロータリアンは国法を遵守することが要求される結果,相手国のロータリアンと深い友情で結ばれることは事実上困難となります。世界の恒久的平和を願うロータリーの国際奉仕の理念も,有事の時には,その運動に限界があります。平時ないしは緊張が高まりつつあるときにこそ,ロータリーの理想である「奉仕の理想に結ばれた,事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって国際間の理解と親善と平和の推進」を目指して努力することで,紛争を防止する抑止力となることが期待されるところです。