刑事時効
最近,15年以上前に起こった殺人事件について,被疑者が自首したり,刑務所に他の刑で服役していた受刑者の犯行であることが判明した事件が数件明らかになりました。刑事事件の時効には,①公訴時効と②刑の執行の時効の二種類があります。一般的に,時効と言われるのは,事件発生後から一定期間内に公訴の提起がないことによって公訴権が消滅する公訴時効です。
かつては,殺人罪の公訴時効は25年でしたが,平成22年の法律改正により,この時効は撤廃されて,公訴時効はなくなりました。その他の「人を死亡させた罪」については,公訴時効の期間が2倍になっております。
これは,被害者の遺族から,「自分の家族が殺されたのに,一定の期間が経過したからと言って殺人が無罪放免になるのはとても納得できない」という声の高まりがあったことから,法務省において,外国の制度,国民の意識調査をした上で,前記のような法律改正をしたものです。
最近のDNA鑑定技術の進歩は著しいものがあり,20年前には判別できなかった犯行現場に残された証拠から,被疑者を特定することが可能になっており,その意味でも公訴時効の撤廃は時代の要請に適合したものでした。
一方では,捜査を担当する側では,公訴時効がない殺人事件などでは,時間的な制約がなくなったので,いつまで捜査をすればいいのか判断に苦しむことも多いと聞いております。
公訴時効がなくなったのは,殺人罪に限定されております。大多数の犯罪類型については,依然として,公訴時効は存在しております。公訴時効の本質については,①時の経過によって犯罪の社会的影響が微弱化し,未確定の刑罰権が消滅する,②時の経過とともに証拠が散逸するので免訴にする,③長期にわたって起訴されない状況が続いた事実状態を尊重し,併せて,証拠の散逸によって生じる誤判を防止するためである,などと説明されておりますが,公訴時効の撤廃や長期化の改正は,法律も,時代の要請に無関心ではいられないという実例でもあります。
殺人罪の公訴時効の撤廃により,一部の推理小説は,改正前の推理小説であることを十分に理解した上で読む必要があるでしょう。