我が国の法人制度
我が国の法人制度は,我が国の民法や商法などの民事法制度を取り入れた「母法」であるヨーロッパ大陸の法律を手本としております。基本的には,第一次大戦前のドイツ帝国の法律を基礎として,部分的にフランス法やイギリス法を取り入れております。十年前には,法人制度に関する大改革が実施されました。
一つは,会社法の全面的な改正で,他の一つは,社団法人や財団法人に関する法制度の整備です。この会社法の改正により,我が国の会社法は基本的にアメリカ法を基礎とするものになりました。会社制度は,全世界的な取引の中心として,世界共通のものである必要があり,株式や社債について,世界共通のものを取り入れたのです。そのために,条文の数は979条となり,改正された会社法の解説書は分厚いものとなり,書棚から取り出すのも一苦労という有様です。
一方,営利を目的とする団体は商法により,公益を目的とする団体は民法により,それぞれ法人とされていたのですが,社会経済の発展により,現実の社会には,営利も公益も目的としない団体が数多く存在しておりました。これらの団体は特別法で法人とされるものも多いのですが,民法の法人について,公益性を要件とすることなく,より実態にあった団体の設立を認めたのが,十年前の民法の法人制度の改革でした。民法の法人に関する条文が少なく,民法改正の形をとると非常に面倒な体裁になることから,特別法を制定しております。
この民法上の法人制度の改正により,法人は,公益性の有無により,一般社団法人と一般財団法人,公益社団法人と公益財団法人に分けられることになりました。
一般社団法人や一般財団法人の設立の方が簡単であることは言うまでもありません。その他,定款や社員総会,評議員会,理事会などの規定をわかりやすいものにして,より実態に即した使いやすい法人制度にしております。
民法上の法人以外にも,NPO法人制度もあり,団体設立のための選択肢が広がったと評価することができます。