最高裁判所について2回に分けてお話いたします。初回は,最高裁判所の物的設備を中心にご紹介いたします。
会員の皆さんがご存知のとおり,我が国の裁判制度は,地方裁判所,高等裁判所,最高裁判所の3つの裁判所によって審理するという3審制を採用しております。地方裁判所は全国に50箇所あります。この数は,都府県の数に北海道の4を加えた数です。高等裁判所の数は,全国で8箇所あり,高裁支部は,秋田,金沢,松江,岡山,宮崎,那覇の6箇所にあります。最高裁判所は,東京地裁や東京高裁から離れた千代田区の三宅坂にあり,近くには,国立劇場があります。
最高裁判所は,全部で15人の裁判官により構成される大法廷と5人の裁判官により構成される小法廷が3つあります。最高裁判所の入り口は,正面玄関を含めて,数カ所ありますが,他の裁判所のように,ぶらりと入って,法廷の傍聴席に座ることはできません。裁判の公開との関係で傍聴はすることができますが,事前にどの裁判を傍聴するかを届け出ておかないと,スムーズには入構できないのです。
最高裁の審理は大半が書面審理です。高裁の判断をひっくり返したり,高裁にさらに詳細な審理をさせる場合には,最高裁判所での弁論が開かれます。私は,これまで,上告事件で2回,最高裁判所での弁論に出頭したことがあります。そのうち,1件は上告が認められて,一部,高裁で逆転勝訴した事件ですが,他の1件は,わざわざ弁論を開く必要がないような事件でしたが,出頭せよとの連絡があった以上は,欠席するわけにはいきません。事前に,代理人としてだれが出頭するのかを聞かれ,2名以上が出頭する場合には,誰がどのような陳述するのかを聞かれ,各自の座る場所まで事前に指定されるのです。そういう意味で,最高裁判所の弁論はセレモニーです。
事前に出頭する際の入り口と入構時刻が連絡され,出頭すると,担当の事務官が控え室まで案内してくれます。そして,開廷時間の10分前には,迎えに来てくれます。最高裁判所以外の裁判所では,担当の事務官が案内してくれるようなことはないのですが,最高裁判所では案内は必要不可欠です。何故なら,トイレ以外の法廷等には表示が一切ないからです。
2つの事件はいずれも小法廷の担当でした。大法廷は,判例変更や大事件などで開かれますが,通常は3つの小法廷で審理されます。3つの小法廷には,大きなタペストリーが下げられています。
最高裁判所に入構するときは,入り口を指定されますが,出て行くときは,どの出口からでも自由です。私は2回とも皇居のお堀に面した正面玄関から退出しております。正面玄関には底の幅が30メートル以上もある三角型の階段がありますが,法律が持つ荘厳さを表現していると言われております。このような最高裁判所の弁論に出頭するという機会に2回も恵まれたことは幸運でした。