今回は,最高裁判所の違憲審査権についてお話いたします。
日本国憲法81条は,「最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定め,通常裁判所に違憲審査権を認めています。
違憲審査制は,日本国憲法の他の規定からも支えられています。①憲法98条1項には「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」という規定がありますが,この規定は違憲審査権を有する機関があって初めて実効性を持つものです。②日本国憲法は基本的人権の尊重を宣言しており,基本的人権が立法・行政によって侵害される場合に,それを救済する「憲法の番人」による違憲審査権の行使が要請されます。③司法裁判所が違憲審査権を有することは,立法・行政との抑制と均衡の上に立つ三権分立を支えるものです。
どのような機関が違憲審査権を有するかは各国により様々です。裁判所による違憲審査制も大きく分けて,特別に設けられた憲法裁判所が,具体的な争訟と関係なく,抽象的に違憲審査を行う方式と通常の裁判所が具体的な訴訟事件を裁判する際に,その前提として事件の解決に必要な限度で,裁判で問題となっている法律等の違憲審査を行う方式(付随的審査制)があります。
我が国の違憲審査制は,憲法81条の解釈として,付随的審査制を定めたものであると解されています。また,違憲審査権は最高裁判所だけに与えられたものではなく,地方裁判所や高等裁判所などの下級裁判所も,事件を解決するために必要不可欠である限り,違憲審査権を行使することができます。
我が国の違憲審査制は,具体的事件の解決に必要な限りにおいて憲法問題が提起され,その限りにおいて裁判所の憲法判断が要請されるものですから,憲法訴訟の原告には,事件解決についての具体的な利益を持つ当事者としての立場(当事者適格)が必要になります。この当事者適格をどのように捉えるかによって,憲法判断の原告となることができるかという入り口の広さや狭さが問題となっていますが,具立的な事件の話しは長くなるので,この辺で終わりにします。