秋田大学医学部5年、ザンビア・ブリッジ企画代表の宮地貴士です。アフリカ南部のザンビア共和国で診療所の建設や医療人材の育成を通じた支援を行っています。活動地は、マケニという僻地の村です。100世帯ほど、約700人が住んでいます。9割以上の人たちが農業で生活を営んでいます。自給自足の日々の中で家族や地域の人々との時間を大切にし、温かいコミュニティが広がっています。
一方で、近くに医療施設がないことが大きな問題でした。村から最寄りの診療所まで歩くと4時間、牛車などを使っても非常にアクセスが悪いです。これが原因であまり清潔ではない自宅で子供を産んでしまうケースも毎月1件~3件見られました。
「診療所を建設することで少しでも住民たちの健康を守りたい」。その思いで私は3年前に本企画を立ち上げました。診療所建設の目標金額は700万円程度。その資金調達を目的にこれまで秋田を中心に全国各地でチャリティーイベントやザンビア料理の販売を行ってきました。
資金調達を日本で行い、現地にお金を送り、診療所建設を進める。事業はシンプルかと思いましたが、想像以上に困難を伴いました。完成予定地が大幅に変更され、建設した土台が無残な姿になるといった問題が山積したのです。今振り返ってみると、私たちに反省すべき点が多々あります。いきなり村に来た外国人が「お金を送るから診療所を建設してくれ」といっても住民の理解が得られるわけありません。相手へのリスペクトが足りませんでした。
そして、事業をどう進めていくか迷っているときに秋田ロータリークラブ直前会長の佐藤裕之さんにお会いしました。そして次のメッセージをいただきました。「一人でも本気でやるやつがいれば事業はうまくいく」。
この言葉を受け、私も覚悟を決め、大学を休学し現地に1年滞在する決意をしました。自分自身がマケニ村に住み、住民一緒になって診療所建設を進めていきました。覚悟は村の人たちにもつながり、徐々に徐々に協力者が増えていきました。伝統的な部族の長などの有力者も自ら参加し、事業は順調に進んでいきました。
新型コロナの影響を受け、去年3月の開院予定は大幅に遅れてしまいました。しかしながら、私が日本に帰国した後も、コツコツと建設は進み、ついに、今月11月中に正式なオープンを迎えられる予定です。診療所が運営されることで安全なお産ができることはもちろん、マラリアや下痢などの病気にも対応できるようになります。村の人たちの笑顔が待ち遠しいです。
次の課題は現地で覚悟を決めて活動していく人材の育成です。いつまでも日本からの支援を続けていくのではなく、現地の人材が主体になって活動していく必要があります。そのために、昨年の2月から秋田ロータリークラブと協力し、奨学金事業を立ち上げました。そして、マケニ村出身の青年でザンビア国内の大学医学部に合格したボーティン君を奨学金生に選出し、そのサポートをしています。今後も医療施設の建設や人材育成といった両輪で現地の医療支援を行っていきたいと考えています。